伊豆の岩のり |
春は新物海藻の季節。当店にもぞくぞくと入荷しています。 海藻の四季では冬の海藻の代表といわれる「岩のり」 これも冬に採取され、年明けてから新物として入荷します。
≪ホリオ剣著「魚の雑学ばなし」≫のなかに、「伊豆の岩のり」の話があります。今日はこれを紹介。
伊豆の岩のり
静岡県田方郡戸田村に井田部落というところがあります。
明治22年の町村制度施行までは井田村といい、伊豆韮山
代官支配で徳川幕府の天領でした。
毎年旧暦の1月4日に海の“口明け”があると、老若男女
だれでもいいのですが、部落内に土地を所有する世帯から
各一名が、ビク、ザル、布袋、海苔をかくカイと称する道具
を持って磯に入ります。
旧暦1月4日といえば伊豆といえども厳冬の最中で寒いもの
です。
この日は大潮で、しかも海はおだやかな日が多いとされて
いて、採取された海苔は、部落全体で処分され等分に分配
されます。
その後は部落の人に限って自由に海に入り、採取してよい
ことになりますが他の部落の者が採ることは許されません。
しかし、実際に他の部落の“盗採”はしばしばあったようで
隣村との紛争の種でした。
井田村の隣の戸田部落の者が、たびたび禁を破り「御謝書」
なるものを差し出しています。
たいていは、犯人は女性、それも年輩の人が多いのは、当時
も海苔は値もよく、その割には簡単な道具で軽労働といった
事もあったのでしょう。
そのころの岩ノリの乾製品は海水で干してあり、そのままで
も塩味があり食べられます。
5枚を1束として、韮山代官江川太郎左衛門に納入されて
いました。
ただし、海塩水で乾した海苔は保存期間が長くないという
欠点もあって、江戸時代でも古い旧式のやり方でした。
井田村の海苔は、多分ゴロタ石に附着する「岩ノリ」や
「ハンバノリ」であったでしょうが、当時としても、かなり
貴重品であったことが、たびたびの盗採事件によって証明
されています。
平成の世になっても、岩ノリは普通の養殖ノリの数倍はし
ます。
伊豆では『岩ノリ』佃煮を各地の土産物屋で名物として販売
していますが、大半は養殖ノリがその中身です。
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