フノリの味噌汁 |
春はフノリ新物入荷の季節。
私たちは幼少の頃から「ふのり」の味噌汁で育ちましたが、西のほうではなかなか馴染みが薄いようです。
≪村上義威著・魚貝藻記≫ にフノリのお話があります。
今日はそれを紹介。。
【フノリの味唱汁】
朝々、豆腐の味噌汁を暖りながら、近ごろ思い出しているのは、生の海藻のフノリの入った豆腐汁だ。
鍋へ入れる前に、摺鉢で多少すりつぶすので、植物体から出る粘液で、そのフノリはジュンサイのように、また、 ナメコのようにつるつるとする。
少しこわくて何となくブツブツして細長いそのフノリは、豆腐のフアフアした柔かさと調和して、 なかなか捨て難い味わいだ。
しかし、このフノリの生を汁の実にする習慣は、フノリのとれる海岸、それもまた限られた地方だけだ。
私も伊豆で初めて知ったのだし、岐阜、三重、東京、熊本、鹿児島、青森と、 幼少時を含めて随分方々の土地に居住したが、伊東と青森県でしか食べたことがない。
学校を卒業して間もない頃、その当時小学校に併設されてあった青年学校に赴任して、 一年半ばかりを伊東で暮したのだったが、下宿した家の夫婦が新井という漁師町の方の出身だった故か、 おかみがそのフノリを味噌汁の実にして、時々食わしてくれたのだ。
私は、人が食うものなら何でも食べる悪食の方だから、却って珍しがって食べたが、同宿の九州生れの友人は、 ある朝の味噌汁にその実がフノリだと聞くと、
「何だ、こんなもの食えるか!」と。
ペッと吐き出してしまった。
彼はフノリなどどいうものを食えるとは思っていなかったのだろう。
大体、フノリといえば、今はあまり店頭でも見かけないが、昔、婦人が髪洗用に使った、蓆のように抄いた、 例の乾海苔位いの大きさのフノリを考えるのがあのころとしては普通で、彼も、とっさにそれを連想して、気味悪がったものだろう。
温泉場である伊東の町は、近ごろは賑やかに、すっかり変ってしまってその下宿のあった場所は、 大川橋という橋のたもとから少し入った田んぽの中の二階の一軒屋で、田に水を張る五月になると、盛んに蛙が鳴き、 その蛙の声に包まれて宵々を過ごしたものである。
あれから三十年、フノリの味噌汁を食べるなどということも、私にはもう絶えてしまったが、 朝の床の中で聞いたごろごろというフノリをつぶす摺鉢の声を時々思い出す。
そして、その鉢の音を立てた宿のおかみも、今はどうしているか。
その日やけした渋紙色の、長い顔を思い出す。
すごく飲ん平のおやじに仕えて、気立ての優しいおかみだったが・・・・。
〈いさな書房刊「魚貝藻記」村上義威より)
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はじめまして!!
投稿者: errie | 2006年03月02日 07:31ふのりの味噌汁、大好きです。でも生のふのりなんて食べた事ありません。美味しそう~。
昨年12月にアメリカから日本に引越し、帰って来ましたがアメリカにいる時も時々海藻問屋のおいしい寒ふのリ食べていましたよ。
これからも体に良い海藻たち、お安く提供してくださいね!
有難うございます。
投稿者: 店長 | 2006年03月02日 08:29北海道や北東北では日常当たり前にふのりは食べます。
体に良く、味わい深い磯の風味がいいですね。
ふのりは今が旬です。
いっぱい食べましょうね^^